top of page

探究インテリジェンスセンターアドバイザーインタビュー<第二回>井之上喬さん




インタビュアー:炭谷俊樹(探究インテリジェンスセンター代表)小田真人(同センター長)

文:小田一枝


-パブリックリレーションズの大家である井之上喬さんに日本社会の構造や教育、大人の学びにとってのあるべき姿を伺ってみました。


井之上喬(いのうえたかし)

日本のパブリック・リレーションズ(PR)の専門家。PR研究で日本初の博士(公共経営)。株式会社井之上パブリックリレーションズ 代表取締役会長兼CEO、日本パブリックリレーションズ研究所 代表取締役所長、一般社団法人グローバルビジネス学会 顧問、京都大学経営管理大学院 特命教授、神戸情報大学院大学 客員教授、一般社団法人日本パブリックリレーションズ学会 代表理事兼会長、北海道大学大学院経済学研究院 客員教授。




(インタビュー冒頭、快活な井之上さんの方からお話を切り出されました。)


井之上:小田さんはもともとITの会社に?





小田:はいSaaS(Software as a Service)を主にやってきました。広告代理店傘下の会社だったので、ITでマーケティングを支援するようなことが多かったですね。6年間シンガポール駐在したんですが、マーケティング以前に、日本が「ルールで負ける」ということに出くわしたのが起業の動機です。ルールは誰が決めるのか?という疑問が原点。炭谷さんの講座(※)を受けながら事業構想したのが6年前のことです。

※探究インテリジェンスプログラムの前身である「探究イノベータ―講座」のこと。





非市場戦略・ルールメイキングで遅れる日本


小田:ぼくが事業を立ち上げるにあたって、とても意識したのは「非市場戦略」という言葉でした。事業活動をするときの戦略が、市場戦略から非市場戦略(注:自社・顧客・競合以外を対象とした戦略)に移行してきたな、とハッキリ思えるようになったんですね。日本が負けっぱなしの「ルールメイキング」や、社会と対話するパブリック・リレーションズが大事になってきたと思うようになりました。井之上さんは、この非市場戦略で、重要な領域をどう捉えていらっしゃいますか?



井之上:非市場戦略、すごく大事ですよね。ルールメイキングについて、日本は本当にできていない。国連の拠出金についても、昔は二位だったのが、今は三位に落ちたことにもよく表れています。国連の職員数にしても、日本は九番目、アメリカは一番です。たしか最新のデータだと日本からの国連職員は70人ちょっとしかいない。拠出金額からいったら、170から230人位はいてもいいと思いますが。なぜそんなに遠慮するのかと思いますよ。


日本はこういうのを「国家公務員がやるべき」だと思いこんでいるが大間違いです。これがルールメイキングできない所以です。数年前から声を大きくして言ってきているからいくらか改善されてきたとは思いますが。日本より拠出金が少ないが、職員数の多い、ドイツ、フランス、イタリアなどヨーロッパの人たちが仲間内でルールを決めてしまうでしょう?だから結局、日本は蚊帳の外になる。象徴的なのがG7ですよ。日本は主導できていない。これが日本の実態だとするとこれは大変なことです。いまは特に動きが速いでしょう?情報を掴んで即時に判断して政策提言しないといけないのに、いったいどうやるのかと思いますね。


失われた30年、日本の弱体化


井之上:失われた30年と言われますが、1997年からサラリーが上がっていない。貧富の差も広がっていて、こんな状態を放置していいのかと。小中高のパブリック・リレーションズの学習資料を作っていますが、そこで関わっている京都の学校と話していたら担当の先生が「全生徒の半分が片親で貧困も多い」と言っていたんですね。そうしたら、それを横で聞いていた大阪の先生が「うちはもっとひどい」と、悲しくなってしまいます。


小田:本当に深刻ですね。


井之上:日本はずっとアメリカの言い分を聞いてきたわけですけど、モノづくりモノづくりと言って、アメリカ側の産業政策の都合を押し付けられてきて、それで弱体化しました。日本の政官財メディアがそろって自らを崩してしまったんです。外圧がかかって日本は談合していると叩かれて業界も崩された。これはもう、ルールメイキングどころじゃない。



バブルが崩壊して自信を失って90年代からアメリカ型の経営手法が入ってきて、日本はそれを受け入れたでしょう。日本は自分の力で自分を変えられないんです。そして経営トップはリスクを取らなくなりました。日本は全体的に弱くなってきている。新しいものでリードするという気概がない。自分からは既存のものを壊せない。新しいことを認める社会もない。もともとよほどの意思を持たないと日本はルールメイキングができないんです。


日本の苦手は「外部環境の変化を読む」こと


小田:「ルールはお上が作るもの」という発想が日本にはありますよね。バブル崩壊の90年代にアメリカの意向を日本がはねのけることができなかったのはなぜでしょうか。


井之上:いい質問ですね。日本は外部環境の変化を読むことが下手なんです。パブリック・リレーションズの手法の中にあるのが、外部環境の変化を読みとることなんですが、これが日本はとにかく下手です。80年代当時、アメリカは急速に経済で台頭してきた日本が怖かったんです。だから叩いたんですよ。私はその頃の日米関係をずっと見てきたからよくわかります。


かつて日本は半導体で世界のトップテンに6社も入っていた。日米のGDPは世界の44%もあったんです。いかに当時の日米関係が重要だったか、日本の産業力が巨大だったかがわかるでしょう。その時に、日本は貿易でアメリカに譲歩したんです。そのころの貿易は、日本からのアメリカ向け輸出は大まかにいうと1.7、それに対して、アメリカから日本向けの輸出は1しかなかった。アメリカは日本にこの0.7のギャップを埋めるために難題を突きつけてきました(※日米貿易摩擦の解消のために、例えば半導体は日本からの輸出を規制し、外国製〈主にアメリカ製〉半導体活用を約束したこと)。




日本はアメリカの要求に大幅に譲歩して、一回アメリカに塩を送った。ところが、バブル崩壊で日本は経済力が下がって、金融や財政の手を打っても効果がなく、復調しませんでした。この原因は日本がそれまで作り上げてきた政・官・財の「鉄の三角形」を自ら壊したのと日本の縦割り行政がひどかったからです。マルチ・リレーションシップがない。だから手を打てなかったんです。


縦割りだから掴めない


井之上:私が長年推進しているパブリック・リレーションズは「横串」なんですね。多様なポジショニングです。しかし日本にはそれがない。取引先、金融機関、消費者、監督官庁、国際世論、そういう横と幅広く繋がって動くことがないんです。縦にしかつながっていないから外と世界の情報に疎くなる。全体像が分からなくなるんです。


小田:まさにそうだと思います。


井之上:パブリック・リレーションズでは、ガバメントやインダストリー、コミュニティなどのさまざまなリレーションズを横串だとすると、縦の機能は、PRの「技術」なんですよ。それぞれの「専門分野」なんですね。極端に言うと、縦の部分は専門家を雇って賄うことができるんです。だから大事なのは横なんですね。横を全部に織り込んでいくことが大事なんです。PRの重要な要素であるメディア・リレーションズでは、絶え間なく現場から情報を発信するんです。トップとしっかり調整した上で日々の動きを現場が把握して、これはいい!と判断したらすぐに発信していくことを言います。これを繰り返すことでルールメイキングが出来るようになります。さまざまな学会やセミナーなどでの発表も重要になりますね。


小田:機動的ですね!


井之上:パブリックリレーションズの手法を完璧に取り込んでいくことを五十年やっていますが、それをやっていく中で、日本に何が必要か見えてきます。ただのカンではなくてですね。こうした課題認識と確信から、私は、昨年日本パブリックリレーションズ学会を立ち上げて「失われた30年検証研究会」という部会もスタートさせました。メンバーには20人ほどの第一線級のジャーナリストが参加し、毎月2人のペースで日本の中枢で活躍する各界の専門家を講師として呼んで自由闊達に議論しています。2年後には報告書を書いて、最終的に政策提言します。どうやったら日本が変えられるか、マルチステークホルダー・リレーションシップマネジメント、つまりパブリック・リレーションズの手法を使って取り組んでいます。


炭谷:素晴らしいですね。


探究とパブリックリレーションズ


小田:縦割の問題とも繋がりますが、いまの大人には「そもそもなぜそうなっているんだろう」という思考が少ないように思えるんですね。ぼくの着眼はそこで、大人にだって「なぜ」を問う「探究」が必要だと思い始めました。炭谷さんが長年取り組まれてきた探究の大人版が必要だと。


井之上:探究は大事ですよね。大人にも探究的なマインドが必要です。ただ、本当は子どものうちからやるべきだと思います。探究インテリジェンスセンターは、受講者の問題意識に気づきを与えて、本人がやるべき道が見えるようになるということだと理解しています。そこを自己満足で終わらせずに鍛えていくということですよね。




炭谷:まさにその通りです。


日本のオポチュニティ


小田:日本のいまの状況ですが、ポジティブに見たときにどこがオポチュニティになると思いますか?


井之上:僕はネガティブなことも言いますが、日本について、実は最終的にはポジティブなんです。日本人は誠実で、決して口約束すら破ることはない。日本オラクルを作ったサンブリッジ会長のアレン・マイナー氏は友人で、授業の講師を頼んだりもするんですが、彼も日本人に触れる中で「AI時代になったら日本が主導権を取るべきだ」と言います。


小田:それはなぜですか?


井之上:日本人は、鉄腕アトムやドラえもんを作ってもターミネーターを作らない。AI時代にそういう恐ろしいものを創らない、それが日本だと。彼は日本に帰化したいとすら言いますよ。ほら、サッカー場でサポーターが試合終了後にゴミを掃除する姿なんかに感動すると言って。そういうことって、人を感動させるんですよね。


小田:なるほど。


井之上:バクダード(イラク)にブッシュjr.侵攻しましたよね。あの動きは予想以上のスピードだった。だから現地は相当に混乱したんです。その時に最初のボランティアでイラク現地に物資を運んだのは日本の学生グループでした。たまたまそこの引率者がイラク人で、この話はそのイラク人から直接聞いたんですけどね。ヨルダンからのトラックで現地入りしたときに、200人ぐらいの人たちから「バクダードにいる家族に渡してくれ」と頼まれた手紙を預かったそうなんです。その学生六人は、「分かりました。直接みなさんの宛先に渡します」といって運んだんですよ。バグダードに着いたら、現地の人たちが「危険だからこちらで渡す」といったら、すごく危険な状況にも拘らず「ヨルダンで直接渡すと約束したから」と言って聞かなかったそうなんです。それが日本人なんですね。


でも、こういう美談を日本人はわざわざひとに言わないんですね。「陰徳善事」として、善行を売名だと思って言わない。でもね、こういうのってもっと言ったらいいと思うんですよ。なぜなら、その行為を他の人も倣うかもしれないじゃないですか。だから例えば企業がどこかで寄付をしたら隠さなくていい。他の企業がそれに倣って続くかもしれないわけですから。


小田:良いことをやったのであれば、それを喚起するために正しくPRをする必要があると。


井之上:そうです!売名だというのは、倫理観が前提になっていないということでしょう。つまり倫理に合うならいいわけです。要するに心の持ち方が大事なわけですから。だからこれから倫理観が大切になると思うのです。


役立つことを横に広げる探究


小田:そうですね。探究インテリジェンスセンターが目指すのは、お互いに褒めあうコミュニティなんです。各自がやっていることを横のメンバーが広げていけるようなものが創れたらいいなと。受講生はいまから自分たちの企画の実践フェーズに入るわけですが、他の受講生もそこを補佐したくなるような、そんな土壌を作って行きたいと思っています。


井之上:とてもいいですね!みなさんとてもお若いけど、いまの若い人たちは素晴らしいと思います。社会に役立とうとしている。ところで探究は自分だけがやるというイメージがありますが。その辺はどうなんですか?


炭谷:中心は一人ですね。それが世の中を巻き込んでいく感じですね。そのあたりがパブリック・リレーションズと関わりますね。


小田:探究インテリジェンスプログラムでは、「戦略的合意形成」というクラスがあって、そこでは、多様な周囲と合意を創っていくことを学びます。このあたりとパブリック・リレーションズの関係についてはどう思われますか。


多数決ではない解決-合意形成


井之上:合意形成とパブリック・リレーションズの関係・・・そうですね、例えば何かの意見で90:10に分かれたとして、多くは90の意見を採用しますよね。こういう場面でパブリック・リレーションズは、倫理の観点が入るんです。取り残される10に意識を向けるんです。しかし、これ自体が目的達成のための倫理ですね。取り残すのではなく、双方向のコミュニケーションを大事にして、意見が違ったら可能な限り合意に近づけていきます。このとき大切になるのが、「自分は正しい」と思っていた人同士がぶつかったときなんです。その自己修正が大事、ここにチカラが必要です。そんな場面でいつも申し上げるのは「100%正しい、というのはない」ということなんですね。必ずどこか譲れるところがあります。そこをお互いに見ながら歩み寄る。


小田:倫理が真ん中にあることで、合意していくということですね。まさに、探究インテリジェンスプログラムの合意形成と同じ発想です。


日本の強みを発揮できない今の経営


小田:社会課題を解決しようというときに、日本が欧米中と同じ土俵でやる必要はないと思っています。例えばシリコンバレー型はシリコンバレーでやったらいいし、深セン型なら深センでやったらいい。わざわざ日本からやるなら、日本流でやったらいいのではないかと思っています。日本的経営が一部見直されてきていると思いますが。


井之上:一部は変わってきましたけどね。半端にアメリカ型が入ってしまったんですね。日本はスピードがそんなに速くない。修正が速くないという特徴がありますね。なのに四半期決算というカタチだけが入ってしまって強みが活かせない。


小田:どうやったら良さを引き出せるでしょうか。内発的動機に基づいてリデザインしてやってくのを描きなおしたいと思っています。子どもたちは探究心があると思うのですが、大人の探究はどう引き出すとよいのでしょうか?


失敗させてくれないと


井之上:フリーランスは別ですが、多くのひとは組織に所属していますよね。彼らの置かれた環境は失敗させてくれない、ともかく日本は失敗を許さないんですよ。それが問題。原子力なんかみてもそうです。失敗がありうるという前提での危機管理体制になっていない。失敗することは普通にあり得るでしょう?それを認める社会でないと探究がうまくいかないと思うんです。


直属の上司の言うことだけ聞いて探究なんかできませんよ。スケールの大きいものはできない。イノベーションは逆境の中で起きるでしょう?いままさに日本は逆境じゃないですか。失敗が許される社会構造を作る必要があるんです。伸びていた昔は好きなようにやってきた。いまは厳しくなって、だからこそ抜本的に組み替えないといけないと思います。


炭谷:全く同感です。そして、やる気がある人を応援して、結果を出させる仕組みも足りていないんですね。そこをうまくやっている会社が出てきたようですがまだまだ少ない。




タイムマネジメントと探究


井之上:もう一つ、探究に関連してくるのは時間だと思います。探究しようとすると時間を使うでしょう?しかし日本は労働のやりかたも探究に馴染んでない。9時から6時でそれ以降は仕事はだめといったら探究は生まれにくい。


炭谷:それで思い出したんですが、こんな事例があります。企業で働く人にRuleWatcherを使って情報を集めてもらうことをやったんですが、そこに関わった方が、大きく二種類にわかれたんですね。新しい情報を採りに行く人と、それが出来ない人。この違いを観察してみると、その差は「自分でタイムマネジメントしているか」に現れていました。みなさん時間がない、忙しいんですが、それでも自分で時間管理が出来る人は新しい情報を取りに行ける。しかし、与えられた仕事を与えられた時間枠でこなしている場合だと探究ができないように思えましたね。


井之上:厚生労働省も働き方について変えないといけない。


炭谷:働きすぎですよね。欧米と比べて労働時間が長すぎます。


井之上:アメリカ大手の半導体関連の会社でナンバースリーをやっている友人が居るんですが、彼が何年か前に、日米の違いについてこんな話をしてくれたんですよ。かつての本社のビルには開発部隊と管理部門が入っていたんですが、5時に帰る管理部門と朝まで電気がついていてやっている開発部門が同居していたんですね。開発の社員は思う存分仕事をしたくても、5時に管理部門が帰るとやっぱり気持ちが揺らぐんだそうですよ。そこで彼らは、開発部門専用に別棟をつくったんですね。それで思い切りやりたい人達がそこに行った。そんなふうに、やりたい人にその場を与えるべきという考え方がベースにあると、そんな話をしてくれました。日本だとハイコンテクストカルチャーで同調させることになってしまう。こういうところを変えないと。


炭谷:自分のリソースを上司にコントロールされたら探究にならないですよね。


小田:時間の主導権を自分でコントロールするんだ、という意識が必要ですね。副業が解禁になってきて、複数の名刺で働く人が出てきました。そういう人たちが探究をやってみようというときに、不幸にして会社が奨励しなかったとしても、夜の時間を使ってでも探究インテリジェンスセンターでやっていくようになったらいいと思うんですね。


炭谷:先日イギリスに行ってであった人たちはみんなマルチプレイヤーでしたね。研究も会社もボランティアも同時にやっています。


井之上:デュアルワークが環境整備されてきた。ともかく変えるなら今ですよね。


日本人が自分の強みを知るには


井之上:小学生用のパブリックリレーションズの教科書。中身は漫画。桃太郎が題材です。別に中学高校用もあり、共通して入れているのは、「自分を知ること」。



自分を知らないと自分の強みが分からないですよね。まずそれを書かせるんです。その次に周りの人たちのことを書かせるんです。これがマルチステークホルダーの第一歩です。どんな性格なのかを、それぞれ確認できる。それから、得意なことがわかる。その上でコミュニケーションが図れるわけです。


炭谷:対話の中でいいところがわかりますよね。


井之上:それがすごく重要。


炭谷:学校の授業を最近よく観に行くんですが、学校では対話が少ないです。だから自分の強みに気づかない。対話の中で特徴が見えてきますね。


井之上:指導要綱はガチガチですよね。だからコロナで休校になったら、残り少ない登校日にノルマを果たすのに真っ青になる。いまの日本の教育の実態はそうなっていますよね。


炭谷:指導要領には「主体的、対話的、深い学び」が掲げられているんですが、実際はできていない。変わってきた学校もありますけどね。


井之上:日本PR学会の理事には学校の先生が多いんですが、言い方は悪いですが、ほとんどボロ雑巾のように使われているんですよ。だいたい中学や高校なんかでも、先生が部活をみないといけないでしょう。県大会だとか全国大会だとか、試合に出るとなると、土日までつかうんですよ。それなのに日当は1時間でも8時間でも2500円位。滅茶苦茶でしょう?


炭谷:労基法違反ですよね。


井之上:ひよっとしたら文科省が一番のブラック企業じゃないですか(笑)。だから社会との関わりが少ない先生は一般常識を知らないんですよ。この環境では仕方がない。学校の先生は民間企業で3年5年と働いてから成るべきなんです。キャリア官僚もそう。民間企業で働いてからやると。そうでないと世界はこんなに複雑なのに、政策なんかたてようがない。政党助成金をもらう政党や政治家も、最近は学校出たての社会経験の少ない人が多い。彼らは夢は語るが現状や社会の仕組みがわからない。


探究をやる人の問題意識でそういう認識をして、ベースにパブリック・リレーションズのマインドがあればずいぶん違うと思いますね。


炭谷:そうですよね。


目的によってステークホルダーが変わる


小田:「パブリック」という言葉の捉え方に日本はズレがあるように思うのですが。


井之上:そうですね。日本人は、パブリックを「公」だと思っているし、PRは「広告」だと思っている。しかし、パブリックは、私が説明するなら「一般社会」のことを指します。だから、その関係を構築するには、目的・目標をもって「マルチステークホルダー」と関わってやっていくんです。



この時、目的によってパブリックも変わるんです。目的によってステークホルダーの順列が変わります。


小田:自分の中での原理原則、プリンシパルが必要なんだと思いますね。それを積み上げてリデザインすると。今回の対談でそこが印象に残りました。


受講生へのメッセージ


小田:井之上先生から受講生へのメッセージをいただけますか。


井之上:探究インテリジェンスプログラム、とてもいい試みだと思いますよ。わたしは探究の大人版を考えていなかった。そこに意味がありますね。受講生の中で、とくに組織に所属しているひとたちにはぜひ「あなたたちは自由な心をもちなさい」と言いたいですね。

さまざまな歴史上の人物や近年のチャーチル、ガンジー、マッカーサー、そしてプーチンなど世界を動かしたり、社会に良くも悪くも影響を与えているのは皆んな「個人」です。一人の人間には無限の可能性があります。皆さん一人ひとりが高い意識と視座を持って行動したら、日本や世界は変わります。パブリック・リレーションズはそのプラットフォームだと思うのです。


炭谷・小田:本日はありがとうございました。










Comments


bottom of page